11/15 清須会議

11/15 清洲会議 天正10年(1582年)本能寺の変。一代の英雄織田信長が死んだ―。跡を継ぐのは誰か? 後見に名乗りを上げたのは2人。筆頭家老・柴田勝家(役所広司)と後の豊臣秀吉・羽柴秀吉(大泉洋)。勝家は、信長の三男でしっかり者の信孝(坂東巳之助)を、秀吉は、次男で大うつけ者と噂される信雄(妻夫木聡)を、それぞれ信長の後継者として推す。勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市様(鈴木京香)は、秀吉への恨みから勝家に肩入れ。一方、秀吉は、軍師・黒田官兵衛(寺島進)の策で、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方に付け、妻・寧(中谷美紀)の内助の功もあり、家臣たちの心を掴んでいく。 そして、開かれる清須会議―。会議に出席したのは4人。勝家、秀吉に加え、勝家の盟友であり参謀的存在の丹羽長秀(小日向文世)、立場を曖昧にして、強い方に付こうと画策する池田恒興(佐藤浩市)。繰り広げられる一進一退の頭脳戦。様々な駆け引きの中で騙し騙され、取り巻く全ての人々の思惑が猛烈に絡み合う! 勝家派か?秀吉派か!?  歴史を扱った作品を手がけるときに、三谷監督がいつもイメージしているのは、“歴史の一瞬を切り取る”こと。映画が始まる前から、そして映画が終わってからも、それぞれの登場人物には人生がある。特に歴史ものの場合、観客がそれについて知っていることも多い。『清須会議』で描かれるのは5日間の出来事だが、会議に至るまでの織田信長、柴田勝家、羽柴秀吉の関係性や、清須会議後の勝家と秀吉の人生など、それぞれの歴史も感じさせるよう心掛けた。その分、映画の中で表現しなければならないことが多くなるため、今作のキャストはそれらを演じ切れる役者陣でなければならない。本作は様々なキャラクターが絶妙に絡む群像劇であることから、実に26名もの日本のエンタテインメント界を代表する超豪華キャストが集結。特に、物語の軸となる清須会議出席の四武将役には三谷監督が絶大な信頼を寄せる俳優陣のキャスティングが実現した。  主人公・柴田勝家役を演じるのは、まさに日本を代表する名優、役所広司。三谷監督とは映画『THE有頂天ホテル』(06)で主人公・申し分のない副支配人・新堂平吉役を演じて以来のタッグとなる。三谷監督からの信頼の厚さは言うまでもない。今作の勝家役に関しても「最初から役所さんしか思いつかなかった」という。勝家は武将としてのキャリアや強さはあるが、基本的には熱く短絡的な男であり、且つペーソスを感じさせるキャラクターである。清須会議における言動だけでなく、会議に至るまでの勝家の人生と、会議後の人生を2時間18分の映画の中で表現するのは、真に底力のある俳優でないと難しい。また、「勝家は衰退して行く側なので、観客に感情移入してもらう必要もありました。演じられるのは役所さんしかいないと思ったんです」。その思いに十二分に応え、役所は勝家を、チャーミングさと男らしさ、そして人間的悲哀を共存させたキャラクターとして見事に演じ切っている。  勝家に対峙する、羽柴秀吉役には、映画・テレビ・舞台と様々な分野で多彩な才能を見せ、活躍が目覚しい大泉洋。羽柴秀吉は、コンプレックスを持ちながらも、百姓から成り上がった人物。人心掌握に長け、明るいお調子者である一方、彼なりの悲しみや心の闇も抱えており、その両面を適格に演じられる役者が必要だった。三谷監督は舞台『ベッジ・パードン』(11)で大泉と一緒に仕事をし、彼に対するイメージが変わったという。「彼はサービス精神旺盛だから、バラエティ色の強いイメージがありますが、芝居の基本的な部分がちゃんとしていて、人間の裏表、明と暗を演じられる、力のある役者です。今回の秀吉は彼しかいないと思いました。それに、この時期の秀吉はもっとも勢いがあったとき。その勢いは、今の大泉さんも持っているものだと感じました」と語る。これまで様々な名優達に演じられてきた秀吉だが、まさに、今の大泉洋にしか表現できない、唯一無二の秀吉像が完成した。   舞台・映画・ドラマと数多くの三谷作品に出演してきた小日向文世が演じるのは、原作の時から三谷監督が一番感情移入したという、ある意味陰の主役とも言える丹羽長秀役。会議の席で一番揺れ動くキャラクターである。「どの歴史書を見ても、丹羽長秀がフィーチャーされているものはないんです。いつもただ、そこにいるだけの人物という感じで。今回は、彼の人物像をきっちり描くのが一つのテーマでした」と三谷監督は語る。「小日向さんが頭の良いキャラクターを演じる時の引き出しを最大限に出してやって頂きました。」という三谷監督の言葉通り、一般的にはあまり知られていない、冷静沈着でキレ者の長秀を、リアリティを感じさせるキャラクターとして力演。特に、クライマックスでの勝家との対峙は圧巻である。 『THE有頂天ホテル』(06)以降、全ての三谷作品を担当し、三谷映画独特の世界観を作り上げてきた種田陽平と、テレビドラマ『short cut』(11)でタッグを組んだ黒瀧きみえが美術を担当している。5日間の会議の会場となる清須城は現存しておらず、現地には模擬天守しか残っていない為、時代考証を重ねつつ「清須城」はオリジナルで設計されていった。 【清須城外観】  外観については、清須会議が開かれた時代には清須城にはまだ天守閣は存在しなかったと一般に言われている。しかし、天守閣があったという説もある。種田は「天守があったとしたらどんな建物か?」という問いから清須城全体を設計していったという。「いわゆる白壁の天守閣ではなく、木の壁の山城のような天守閣。このデザインは映画『清須会議』の為のオリジナルデザインです」と種田。その天守全景は高さ2mに及ぶミニチュア模型で見事に表現され撮影された。城郭部分については平安時代の寝殿造りの様式を取り入れたという。 【清須城居室】  寝殿造りに表現された清須城の住居部分は、日本最大のスタジオである東宝スタジオ第9ステージにセットで建設。これまでの三谷作品同様、セットの建て込み前に何度もミニチュア模型で小さなセットを作り、カメラで撮影した際の見え方等について検証を重ねた上で設計されている。居室内から障子を開けると背景に他のキャラクターの居室が見えるよう、奥行きを意識したデザインとなった。  居室の配置についても、勝家と秀吉のように敵対する者達は庭を挟んで向かい側に部屋を取るルールを決めるなど、登場人物たちの様々な駆け引きや心理戦がより効果的に表現出来るよう、計算し尽くされている。三谷監督は語る。「『七人の侍』(54)など僕の記憶に残っている映画は、俯瞰で見せるシーンはなくてもなんとなく村全体の配置がイメージできるんです。今回の映画はそれを目指しました」  室内は、キャラクターに合わせた色使いや模様、調度品で装飾されている。織田家の人々は清須城に居住している為、お市様は風流、三十郎信包はエキゾチック、信雄は部屋中遊具だらけというように、キャラクターを色濃く反映。一方、織田家以外の登場人物は、5日間だけこの居室に泊まっている設定なので、どこまでキャラクターを象徴させるかのさじ加減を探りつつも、個性的な装飾を施した。  たとえば襖絵や障壁画では、柴田勝家の居室には虎を描き、勇猛果敢かつユーモラスなイメージを表現。羽柴秀吉は野菜、丹羽長秀は龍というように、それぞれのキャラクターを表したものになっている。調度品も、派手好きで見栄っぱりの秀吉の部屋には陣羽織や京都から持参した大量の土産品が置かれているが、冷静沈着で頭脳派の長秀は本や掛け軸が並んだ落ち着いた作りで、その個性の違いが一目でわかる。  居室でぐるりと囲まれた庭には、戦国武将がこよなく愛したソテツが植えられ、庭の中央には池があり、さらに川の流れを鱗石で表現した枯山水まで。スタジオのコンクリートの床の上に土や苔を入れて造り出されたとは思えないリアルさである。ちなみに、この枯山水は、織田信長が十五代将軍・足利義昭のために作庭したと言われる真如院の庭園を参考にしている。  そして屋根部分は、茶室のみ檜皮葺(ひわだぶき)、その他の部分は薄い木板を使った杮葺(こけらぶき)を再現。細部までの徹底的なこだわりが作品全体に深みをもたらしている。 【清須城大広間】  物語のクライマックスの舞台である、清須城の大広間は、東宝スタジオ第9ステージと同サイズの第8ステージに建てられた。会議のシーンは動きが少なくなる為、どれだけダイナミックに見せられるかが勝負となる。カメラが自由に動けるよう、大広間は可能な限り広く設計された。  このセットには、平安時代から使われた、「蔀戸(しとみど)」という下から上に水平に吊り上げて開けるタイプの格子戸を使った。「会議のシーンでは密室感を出すため蔀度を締め切り、会議のあとで蔀度がいっせいに開き、大広間と庭は一つの開放的な空間になり、緊張感が放たれるようにデザインした」と種田は構想を語る。  格天井(ごうてんじょう)を備えた大広間の正面には、織田信長がこの物語の中心にいることの象徴として、信長が京都の馬揃えで着ていた鎧かぶとが鎮座している。その背景となる障壁画は、金箔を貼ってその上に絵を描く、桃山時代に流行した高級な壁画(金碧障壁画(きんぺきしょうへきが))である。絵柄は、上の方の雲が日本画風であるのに対し、下の方の雲は西洋画風で、信長のキャラクターを反映した和洋折衷な表現にしている。  このように、映画『清須会議』の為の架空の「清須城」は、新旧、和洋が混ざり合い、虚実を混在させて完成した、三谷版オリジナル清須城なのである




『トランスポーター』シリーズなどのフランスの鬼才ルイ・ルテリエが監督を務め、希代のプロマジシャン、デヴィッド・カッパーフィールドが協力した娯楽作。マジックを駆使して瞬く間に大金を強奪する4人のマジシャンと、彼らを追い掛ける捜査官たちのチェイスを描く。グループのリーダーを『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグが演じ、FBI捜査官を『キッズ・オールライト』のマーク・ラファロが演じている。華麗な映像トリックや、予測不能の物語に魅了される。 マジシャンとして一流の腕を持つアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)は、フォー・ホースメンというスーパーイリュージョニストグループを束ねていた。彼らはマジックショーの中で、ラスベガスから一歩も動くことなく、パリにある銀行から金を奪ってみせた。この件を受けて、次の計画を彼らが実行する前に食い止めようとFBI特別捜査官のディラン(マーク・ラファロ)が捜査を始めるものの……。